ストライキ Ⅱ2008/04/11

 やっと文章があがりました。あがらなかった原因は私のスキル不足です。
 それでは過去に上げたつもりになっていた内容を順に上げていきます。
 まずはストライキについて会派で市長に申し入れた文書を紹介します。

尼崎市長 白井 文 様
申し入れ
              2008年3月31日
              虹と緑

 市民課入力業務の派遣労働者による今回のストライキは、市が進めているアウトソーシング(民間の力の導入)に大きな問題を投げかている。
 今回問題となったいくつかの論点について私たちの見解を述べるので、これを参考にしてしかるべき対応を検討いただくよう要望する。

1 市の主張によると、当該労働者の入力業務への就労ができなくなる直接の原因は、08年度業務の随意契約が不成立となり、入札を行うことになったことにある。

市側の説明を総合すると、その経緯は次のようなことである。
[この業務は、一度入札で業者を決めると、その後5年間は随意契約で継続するようにしている。今回随意契約を結ぼうとしたら、派遣元業者から値上げの申し出があった。入札で決まった金額をその後の随意契約で上げることは入札の公平性を損なうとの考えから、市としてはこの要請に応じなかったところ、業者は随意契約を辞退したので、来年度の業務を確保するために入札をすることにした。]
しかし、われわれはこの件に関して、その経過との関連で市側に次のような瑕疵があると考える。
①まず、まさにこの件に関して、入札で決まった金額が、わずか数ヵ月後に値上げされた経過があるということ。
07年4月の、委託から派遣への契約変更に際して、労働者一人あたり単価が約17%値上げされている。この事実は「入札の公平性を損なう」ことにはならないのだろうか。委託から派遣に契約の外形が変わっても、就労の実態には全く変化はなかったのである。

②もう一点、業者からの今回の値上げ要求には斟酌すべき特段の事情があった可能性がある、ということ。
同じく昨年4月の契約変更に際して、市側と当時の受託業者は、労働局の是正指導を受け「労働者の雇用の安定を前提に(略)適正に改善すること」を迫られ、わずか一月間で委託契約から派遣契約への切り替えをまとめなければならなかった。
では、そのような切迫した事態に追い込まれた原因はどこにあるのか。
06年12月の私たちの会派議員の一般質問、07年2月、委託先業者からの派遣契約への切り替えの申し出、07年2月14日 労働組合(武庫川ユニオン)からの指摘等、再三の指摘や要請に対して、市はしかるべき対応をとらず、その結果、07年3月5日になって、兵庫労働局の是正指導を受けるにいたった。
是正指導の内容は、2001年1月4日からの委託契約について偽装請負を認定したものであるので、違法な偽装請負状態は6年以上に及んでいたことになるが、たとえ前の5年間は「過失」であるとしても、06年暮から07年春にかけて、偽装請負の問題提起を受けてからの市の対応は明らかに誤りであり、「故意」または、少なくとも「重大な過失」とせざるを得ない。これが3月になって是正指導を受けてからわずか一月で契約変更をせねばならないという切迫した事態となった最大の原因である。ちなみにそのような判断に至るに当たっての市の担当者の責任も明らかにされていない。
受託業者側にしてみると、労働局の是正指導は、労働者派遣業資格にかかわる行政処分を背景にしたもので、おろそかにできるものではない。他方、労働組合からの賃金値上げの要求にも応対せねばならない。時日もない中で、労働者の賃上げを30%とし、契約単価が先ほどの17%にとどまり、利益の圧迫が起きるとしてもるとしても「急場をしのぐためにやむなし」との判断をせまられた可能性はある。
とすれば、1年間の利益圧迫を甘受した業者からの契約金額の変更申し出は、「入札の公平性確保」を理由にはねつけてしまってよかったのだろうか。再考を求めることは不当なことだろうか。
ましてや、そのことによって、最低5年間は続けて働けることを期待していた、何の過失もない派遣労働者たちの就労が途絶えることになるとすれば、こんな理不尽なことはない。

2 市と当該労働者の関係について
市側は、派遣労働者の雇用問題については「関与できない」との見解である。その上で当該労働者の雇用については、「派遣業者が、現在と同等以上の条件の職場を紹介する、と約束している」と述べる。
まず、派遣業者が次の職場を紹介するのは、派遣業者である限り当たり前のことであって、わざわざ約束してもらうようなことではない。逆に紹介を怠れば、争議行為や労働組合への加入に対する不利益取り扱いとして違法となるおそれがある。当該労働者の雇用について何事か特別なことが言われたわけではない。
そもそも派遣労働者の雇用問題には関与できないのだろうか。契約の成立如何で雇用が続いたり切れたりする労働のあり方自体、使用者としての道義に反するのではないのか。
そのような疑問があるから、雇用関係の全く無い業務委託や指定管理者制度においてさえ、従業員の雇用に対する配慮がしばしば重視されてきたのではないか。派遣労働と派遣先の関係は委託の労働者と委託元の関係よりは直接雇用関係に近い。その雇用に対して「全く関係ない」「関与できない」と言い切ることは、当然に当該の労働者との間に軋轢を生むだろう。

3 今回の争議への対処について
 市はこの一連の経過の中で、「最小の経費で最大の効果」を目指す姿勢しか示してこなかった。これは買い手の論理である。その限りで市側の論理は一貫している。
 ところが、安く労働を買いたい市側と、あまり安くされてはたまらない労働者との間には常に利害の対立がある。売り手と買い手の間の矛盾にたとえることができる。ただ、労働力という商品の売り手が他の売り手と根本的に異なるのは、市場で売り手と闘うための手段、すなわち生産調整、出荷調整、などの手段を持っていないことである。コストすなわち生活費と引き合わないからといって売ることをやめるわけにはいかない。基本的に市場での売り手と買い手の闘いを対等に闘えない宿命を負っている。そのまま市場原理に叩き込めば雇い主の「最小の経費で最大の効果」を求める要求が支配して19世紀のイギリス産業革命後の労働者の惨状が、社会の崩壊まで続く。
 それではたまらないから労働者が労働組合を結成し、賃金労働条件の改善を求めて争議を起こすのであり、そんな社会崩壊の道は困るから労働者保護の労働法制があるのである。
この論理は買い手の狭い枠内では存在できない。その外部にあり、買い手側から見ると「妥協」か「我慢」に見える。しかし、市場経済の中では労働者と使用者の間の労働の売買における矛盾はそのように処理されてきたし、そのように処理するしかない。

各個の判断は合理的でも、それが積み重なることで大きな非合理を導いてしまうことがある。「合成の誤謬」と呼ばれている。一般的には同時多発的な、例えば消費者の行動などの事例で指摘されるが、今回の市民課入力業務の労働争議に対する市の対応は、主体がひとつで、時間を追って判断が積み重なっている場合の例と言えそうである。
市の判断、対応はそれぞれの局面、局面で、買い手の論理としては合理的であった。しかし、それが積み重なることにより、大きなトラブルを生じ、買い手の利益の見地からも差障りが出る結果となる。

格差社会へ問題提起の気運の中で、この争議は全国的な注目と支援を集めることとなっている。同時にこの争議は、市の行財政構造改善の大きな手法である「アウトソーシング」「労務政策」に暗雲を投げかけた。
統廃合される外郭団体、3年毎に更新される指定管理者、入札のたびに入れ替わる業者、派遣労働で充当される業務などで働く労働者、そして直営から民間に切り替えられ、又は職員制度の合法性のために整理される部門に働く非正規職員、これらのすべてが「アウトソーシング」の進展に伴って、増大する雇用不安にさらされる。一人正規職員のみが、少なくとも雇用の不安がない状態に、法的根拠もなく安住している。
同じ公務労働に従事する労働者の間での、このような格差が量的にも質的にも拡大するままに「アウトソーシング」をすすめると、今回と同様の紛争が広がり、深刻化することを避けられないであろう。

現在までの硬直化した公務労働制度を見直し、派遣、委託、外団、指定管理者、非正規、正規、すべての公務労働のあり方を、全うな意味での労務政策で貫いて企画し、制御する機能と部署が必要である。
全うな意味での労務政策とは、労働力の購入にあたって、買う側の立場に立ちつつも、労働者の立場、労働法制の遵守、社会的道義的価値、などにも配慮しつつ、安定的で良質な労働が提供されるようにする立場のことで、きわめて高次元の構想力と調整力を要するものである。
 今回の争議において、市役所にこのような横断的機能が全くなく、委託や派遣の導入方針は業務の所管課で、その契約は調度課で、外団の統廃合は企財局で、嘱託や臨時職員は、正規職員と一緒に職員部で、という風にばらばら、縦割りで応対していることがあきらかになった。今回のようなまさに「労務政策の機能不全」とも言うべき状態の大きな原因がここにある。

 今回の争議は、市が事実上初めて遭遇する本当の労働争議である。公務員と違ってスト権のある労働者が、収入レベルも余裕のない状態で、生首をかけて戦う争議は、貴重な教訓とするべきである。
 この争議の解決のあり方如何が、上のような意味で、市の行財政改革の将来を左右する問題であることを肝に銘じて、過ぎたことを改めることを徒に厭うことなく、虚心に交渉する中から解決の道を探られるよう強く求めます。

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