三里塚 Ⅲ2009/11/05

 木の根ペンションと同様に、この新東京国際空港には敷地のそこここに虫食い状に反対派の土地が残っており、反対運動の激しさと、強権発動を繰り返し、その火に油を注いできた国家の愚かしさを物語っている。

 中でも横堀地区に残る旧「横堀要塞」の敷地は完全に空港の中。そことの行き来のためだけに作られた地下道を通って行く。鉄塔には農民のイメージの彫刻が展示されている。すぐ向こうは空港敷地。
 これら反対派の土地には個人所有のものもあれば、いわゆる一坪共有運動の土地もある。長い年月の中、共有者の中には権利を公団に売ってしまった人もいる中で、空港公団は残った共有者に対して訴訟を起こしてきたという。

 訴状にいわく、「共有地権の大半は既に空港公団が持っており、いまや当該の土地は空港反対運動の目的以外に何らの経済的利用をされていない。(だから公団に強制買い上げさせてくれ)」

 思わず突っ込みが入ります。「あたりまえだ。空港反対のために所有している土地が空港反対に役立っていれば十分だ。それ以上何の役に立てというのか」

 空港公団がこんな訴訟を起こしてくるのは、1980年代に反対派との話し合いの中で「今後は強制収用はしません」との約束がされたからです。
 
 土地収用法(重要な公共事業のためには私有地を強制買い上げすることができるという法律)を適用し、その収用にあたって思い切り警察の暴力がふるわれたことがこの対立を昂進させた大きな原因の一つであり、その後の暴力的弾圧と実力抵抗の連鎖の始まりであったことを思うと、昔日の感があります。

 しかし、喧嘩で圧倒的にどついていたほうが、「今後はどつきません」と言ったからといって、それまでその暴力によって獲得したものを返さぬ限り「イーブン」になったとは言えないわけです。

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