園田競馬つづき2011/11/09

 ナイターレースができなければ・・・撤退

 「他に売り上げを増やせるあてはないので、競馬場をたたむしかない」と競馬組合の担当者は言います。

 そして、「競馬事業から撤退するにも多額のお金がいる」と言われています。
 しかしこれは、ひそかに脅しのようにして言われている事で、私の前任の尼崎側議員が競馬組合議会で尋ねたところ、「撤退の検討は競馬組合の仕事ではない。撤退の経費を説明する材料はない」との答えでした。
 したがっていくらかかるのかはわかりません。実態がわからないほど不安は大きくなります。
 かくして、巨額の廃業費用という不安の下で、関係者は「行くも地獄、とどまるも地獄」みたいなジレンマに落ちいっています。
 そして、役人には「先送り主義」という悪い性癖があります。
 解決が必要な問題があっても自分がその職にある間は放置しておくのです。
 こういう姿勢を、日本では「後は野となれ山となれ」・・・西洋では「我が亡きあとに洪水は来たれ」というそうです。


 貯金が残っていれば

 廃業にいくらかかるにせよH3年に持っていた120億円の貯金があれば心配はないと思うのですが・・・。赤字でも配分金を出し続けて、今やすっからかん。
 いったい何を考えて、赤字になってからもその貯金を食いつぶして配分金を出してきたのでしょう。「責任者を出せ」と言いたくなります。
 決断は早くしないと
 このようにナイター計画の可否は競馬事業存廃の決断と直結しているのです。酒井としても調べれば調べるほど「えらいときに競馬組合の議員になった」と身の引きしまる思いです。

 しかし、放置は許されません。 
 
 ナイターに投資する前に競馬事業の存廃を決めなくてはなりません。
 ナイターで経営が改善されると見込めるのならまだしも、その見込みが薄いのなら、ナイターに投資をしてから撤退の決断をしたのでは投資が無駄になります。その金額は約6億円。撤退の際の財源の足しなるはずのお金です。

 撤退で発生する費用の負担を恐れる声もあります。確かに財政難の今その負担を避けたい気持ちもわかります。
 しかし、それも経営の改善の見通しがなければ、負担の先延ばしにしかなりません。先送りすれば負担は増加する可能性が高いのです。

 経営改善の見通しは誰も確実なことは言えません。しかし今の時点で決断するしかないのです。

放射性物質に汚染された瓦礫の処理2011/11/10

がれき、瓦礫。
○東北の震災がれきの受け入れが大議論になっています。

 これまで、災害時の瓦礫は自治体間の助け合いで処理されてきました。

 焼却炉は国や県にはありません。持っているのは市町村だけですからそうなります。

 阪神大震災の時にも、他都市のパッカー車が来て震災瓦礫を自分の町の焼却炉に持って帰って処理してくれたものです。そのことを思い出すと今でも目頭が熱くなります。
  
 そんなわけで、東日本大震災震災でも、瓦礫焼却処理の能力の問い合わせに対して尼崎市は、「1万トンくらいなら可能ですよ」と、当たり前のこととして返事をしました。

 麗しい被災地支援の心根でした。
 放射能汚染問題さえなければ。

 そのあと、放射能汚染が問題になります。その中で、雑誌アエラに「尼崎市は放射能に汚染された瓦礫を受け入れると言った」かのように報道されたのは、この回答のことです。

 そして「放射能瓦礫の受け入れ反対」の声が上がっています。

 「放射能に汚染された瓦礫を、汚染の無い地域にわざわざ運んで拡散してもいいのか?それを吸い込む尼崎の子どもたちの健康はどうなるのだ」
 
 「それではあの大量の瓦礫をどうするのか? 被災地で処理しろ、で済むのか?
 放射線量について十分に厳しい基準を設けたうえで、受け入れて処理するのが助け合いではないか」

 議論はつづきます。

 「放射能がれきを受け入れないで!」と言う陳情が審議された日、市議会の傍聴席は赤ちゃん連れのお母さんであふれました。

 若いお母さんの真剣なまなざしを前に、議員たちは深い悩みに沈むのでした。

○放射性物質に汚染された廃棄物の法的扱い
 
 「廃棄物の処理と清掃に関する法律」によると、廃棄物とは、液体や固体の汚物または不要物、ただし放射性物質とそれに汚染されたもの以外、と定義されています。
 つまり放射性物質に汚染されたものは自治体が処理する廃棄物ではなかったのです。

 ところが、被災地のがれきは多かれ少なかれ放射性物質に汚染されている可能性があるので、この法律通りだと、自治体は瓦礫を処理する事ができません。

 これまでのように被災自治体の瓦礫を他の自治体が応援で処理してあげることもできないことになります。

 そこで国会は議員立法で、震災と原発災害のがれきを処理するための「特別措置法」を作り、放射性物質に汚染されたがれきも廃棄物に入れることにしました。
 そして、これを受けて環境省は、焼却処理して出た灰や燃やせないがれきの最終処分も、「放射能8000ベクレル/㎏までは普通に埋め立ててよろしい」「10万ベクレル/㎏までは囲いの中にに埋めなさい」といっています。

 次には、焼却場に持ちこむがれきの放射能の基準も決めなくてはいけません。しかし現在のところ環境省はこの基準を決めていません。

 3・11以前は、 放射性物質に汚染されたものは別の原子力関係法に基づいて、基本的には原子力施設内で処理、保管されることになっていました。放射能は人の手で消すことが出来ないのですから当然のことでした。放射性廃棄物で原子力発電所の外に出してもいいのは、100ベクレル/㎏未満ということになっていました。

 焼却による放射性物質の濃縮率は33倍程度ですから、焼却灰を8000ベクレル/㎏に抑えようとすれば、燃やす瓦礫の上限は240ベクレル/㎏となります。これは前の100ベクレル/㎏を上回ります。
 100ベクレル/㎏の基準自体原子力発電所側の「基準を緩めて低レベル放射性廃棄物は場外に出せるようにしてくれくれないと原発の敷地が廃棄物だらけになってしまう」という声にこたえて出来たもので、「この基準は緩すぎる」という批判を受けているのです。
 
 運び込む瓦礫の放射能基準をどう定めるのでしょうか?
 現在のところ環境省はこの基準を決めていません。

○国のていたらく

 3・11以降、国の放射能汚染に対する対処の仕方、食品や環境についての基準の決めかたを見ていますと、市民の健康や生活の安全に、ではなく、汚染が広がっている現実に合わせて「後出しで」決めているのが実態です。

 原発事故直後の避難範囲の決定、がそうです。避難範囲を風向きなど無視してただの同心円で順に広げていっただけで、結局後手に回って、多くの住民に避けられた被ばくをさせてしまいました。
 
 食品の放射能についての暫定基準もそうです。チェルノブイリ事故の後輸入食品に定めた基準370ベクレル/㎏より緩い基準にしましたが、その理由は全く説明できません。

 子供の施設の除染や避難基準もそうです。これまでの一般市民の被曝上限1mシーベルト/年をはるかに上回る20倍、20mシーベルト/年までに基準を緩めたのも、現実にそれくらいの汚染が広がっていたからです。
 
 そしてこの廃棄物に関する基準。
 8000ベクレル/㎏などという放射性物質は、以前なら放射能マークのついたドラム缶に詰めて原子炉施設の中に永久保存されるべきものでした。その基準を、沢山出て追いつかないからと言っていきなり外していいのでしょうか。

 しかも、これらの決定は全て、廃棄物処理の当事者である自治体には何の相談もないままです。
 唯一あった自治体に対する相談は
 震災直後、「あんたのところは震災瓦礫どれだけ引き受けてやれる?」という問い合わせが来ただけ。
 尼崎市も含めた各自治体は「うちはこれだけ引き受けられますよ」と返事しました。
 放射性物質によるがれき汚染問題が問題になる前のことです。
 これがアエラなどにセンセーショナルに取り上げられ、「放射能瓦礫が燃やされる、汚染が広がる」という報道になりました。「尼崎市は年間1万トン」などなど。
 尼崎市にしてみたら、放射能のことなど考えずにした返事がそのように報道されて、いい面の皮です。

 そして、その後は「無しのつぶて」で、10月に入ってからいきなり
 「あんたのところは、(放射性物質汚染瓦礫の処理を)A決めた B研究中 C研究準備中 のどれか?」という問い合わせです。
 「できないという選択肢がないやないか」と皆怒っています。

○尼崎市の回答は次の通りです。

 ①検討状況               ― (回答せず)
 ②検討内容等              「放射能汚染の恐れがある災害廃棄物の受け入れに際し、処理施設における放射性物質の挙動など技術的な知見が十分に示されていない状況、更に焼却灰等の受け入れ先である最終処分場(海面埋め立て)での処分方法等が具体的に示されていない現状から、受け入れを検討できる状況にありません。
 
 他の自治体の多くも似たような返事をしたようです。

 しかしそんな中、東京都が瓦礫の処分の受け入れを始めたことが報道されました。
 尼崎市が、「ここが決まらないと検討もできない」と言っている最終処分場、「大阪湾センター」も近畿圏の広域の自治体などの共同設立ですので、最終的には国の言うことを聞くものと思われます。

○早晩尼崎市も態度決定を迫られます。

 仮に受け入れ前提で考えると、
 1 受け入れ瓦礫の放射能汚染の限度を安全性の見地から決定
 2 運搬中の安全確保
 3 処分中の安全確保
 4 周辺の汚染阻止、
 5 最終処分の安全確保
 6 これらすべての厳密な検証と情報公開
 6 住民の理解と合意

 などの課題を解決しなければなりません。先の国の姿勢からして、これを環境省や国に任せきりにしては安全性に信用が置けません。

 ここは、尼崎市などの自治体が主体的に、震災復興の支援としての瓦礫処理支援と、放射線被爆からの安全が両立する道を探っていかねばならない場面です。

 遠く東北からの運搬の経済合理性から考えて、海沿いにあって、港湾施設の近くに焼却炉を持っている自治体(尼崎のように)には特に強い要請があるものと考えて真剣に対処しなくてはいけません。