竹中さん2013/02/08

竹中さん

 お久しぶりです。NHKのニュースに生出演しておられましたね。お姿だけでなく、ご発言もとても懐かしいものでした。

 「雇用の規制を取り払わないと企業は雇用がしにくいので海外に逃げて行ってしまう。」
 このようなご趣旨だったように思います。

 かつて、この考えのもとに、派遣労働が解禁されたのですよね。
 その結果はどうだったでしょうか。

 手元に1000円の金も持たずにネットカフェで世を明かす若者。「年越し派遣村」の大賑わい。秋葉原だったかの無差別殺人事件。

 商品は自由競争の中で品質と価格のバランスが磨かれていくものです。

 しかし、労働力は商品として扱ってはいけないのです。なぜならそれは生きた人間だからです。
 人間は商品と違って値段が合わないからといって在庫しておくわけにはいきません。在庫の間に飢えて死んでしまいます。

 人間は商品と違って性能向上のために仕事を休むわけにはいきません。その間収入がなくては食べられないのですから。

 人間は日々食べなくてはいけないので、商品市場では不断にたたき売りをするしかなくなります。
 だから労働力市場には他の商品市場には無い、労働者保護のための特別な「規制」がかけられてきたのです。

 雇用に関するものでいえば、職業安定法がその柱です。公共以外に労働力のあっせん(人入れ)を禁じる法律です。
 労働者派遣法はこの「人入れ」を解禁したのです。それでも製造業でまでこれを許すと不安定雇用が増大するので、まだ製造業での派遣は禁止されていました。それを取り払ってしまったのが、小泉改革です。竹中さんの仕事の一つでしょう。

 労働力市場の規制撤廃は最も大事なところですでに実施されているのです。その結果が、今日の不安定雇用の拡大、社会不安の増大なのです。

 なのにあなたは「僕はまだ本当の成長戦略をやったことはないのです」とおっしゃる。
それは、私には「まだ、労働者を本当の地獄にたたきこんでいません」とおっしゃったように聞こえてしまいます。

 かつて帝国陸軍は、もう十分以上に戦って負け続けていながら、本土決戦を呼号するにあたって、「我が軍はまだ本当の地上決戦をやっていない」と叫んだそうです。
 そのバカバカしさと、しかしこのばかばかしい無責任がもたらした災厄の深刻さを、竹中さんのこの発言と重ね合わせて考えてしまうのでした。

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